Words between the sounds

NOTES

音楽、制作、暮らし。
その間にある、まだ名前のないこと。

Latest notes

35 STORIES

トリガーが発火している

プログラミングの言葉は、いちいちカッコいい。人間の心で起きる小さな発火について。

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母さんへ

五十を過ぎて、まだ何かの初心者になれるというのは、悪くないものです。長岡の家の二階から、音の道具を世界へ送り出す日々について。

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カラオケで歌える歌

人生で、カラオケという場所に行ったことが、本当に数えるほどしかない。 マイクの前で歌うということに関しては、日常的にたぶん普通の人の何倍も経験がある。 レコーディングでも、ライブでも、ミックス中の修正でも、マイクと声の距離感にはそれなりに慣れているつもりだ。 しかし、カラオケという環境では、ほとんど経験がない。 行ったことがあるのは、同窓…

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「なぜカツカレーはあるのに天ぷらカレーは無いのか?」

どんなに優れた人であっても、 相性が悪ければ力を発揮できない。 これは、人間関係でも、仕事でも、音楽でも、料理でも同じだ。 たとえば、天ぷら。 天ぷらは素晴らしい料理である。 海老天も、かき揚げも、野菜天も、あの軽やかな衣と素材の香りがあってこそ輝く。 では、カレーに乗せたらどうだろう。 カツカレーがあれだけ美味いのだから、 天ぷらカレー…

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ミュージシャンって、暇じゃね!!?

メジャーデビューした時、ある程度のお金を制作費としてもらい、ひとまず音楽だけで食べていける状態になった。 その時、私が最初に思ったこと。 「ミュージシャンって、暇じゃね!!?」 もちろん、音楽だけを作って生きていけるなんて、最高だと思っていた。 憧れていたし、実際それはありがたいことだった。 でも、いざそうなってみると、私はその“暇”に耐…

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善人なおもて往生す

「善人なおもて往生す。いわんや悪人をや。」 私の大好きな言葉のひとつだ。 親鸞のこの言葉は、初めて聞くと少しギョッとする。 「善人ですら救われるのだから、悪人なんてもっと救われる」 そんなふうに聞こえるからだ。 もちろん、ここでいう“悪人”とは、ただ好き放題に生きる人間を讃えているわけではない。 人を傷つけても平気な者を肯定しているわけで…

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I LOVE N.Y.

ゲイリー・ルーカスの渋谷クアトロ公演を観た。 歴代ニューヨーク・ロックシーンの生き証人みたいな人である。 そしてあの日のクアトロには、まさに「あのニューヨークの空気」が充満していた。 ゲイリーのギターはすごい。 ブルース、カントリー奏法から、ヒップホップ的なルーパー使い、シューゲイザー的なエフェクト、速弾き、泣きの一発チョーキングまで、全…

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アーティストは政治的発言をすべき?

「アーティストは政治的発言をすべきだ」と強く求める人たちの中には、実のところ、「自分たちの思想に沿った発言をしてほしい」と願っているだけではないか、と疑っている。 思想が一致している時は、 「勇気ある発言」 「表現者として素晴らしい」 と称賛する。 ところが、少しでも方向性が異なると、途端に、 「失望しました」 「もう聴きません」 「権力…

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反体制アート

バンクシーを見ていると、時々ふと思う。 「それ、もう最初から答え書いてあるよね」と。 もちろん、うまい。 絵としても強い。 一瞬で意味が伝わる。 SNS時代との相性も抜群だ。 火炎瓶の代わりに花束を投げる。 監視カメラの下で遊ぶ子供。 ネズミ。 兵士。 風船。 国旗で塞がれた顔。 なるほど。 戦争反対。 権力批判。 資本主義への違和感。 …

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地獄に堕ちるわよ

Netflixの『地獄に堕ちるわよ』を観終えて、しばらく呆然としてしまった。 細木数子。 いや、すごい。 もちろん、現代の物差しで見れば、ほとんど全部アウトである。 怖い。 強い。 押しが異常。 言葉が乱暴。 金と支配。 だから、 「あんなものはダメだ」 「時代が許しただけだ」 「悪魔みたいな女だ」 と言ってしまうのは簡単だ。 たぶん、そ…

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よくこんなもの作ったな

ここ数年で、アルバム4〜5枚分くらいの曲は作ってきた。 けれど、その多くはまだ未発表のままでいる。 リリースしなかった理由は単純で、アルバム1枚分くらい仕上がった直後には、もう次の曲が出来てしまうからだ。 しかもたいてい、新しく出来た曲のほうが自分にはクオリティが高く感じられる。 すると、それまで作っていた曲たちが色褪せて見えて、気持ちが…

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後の犬

この「後の犬」(うしろのいぬ)という曲は、1998年、メジャーデビュー直後に、それまでのカセットテープMTRからADAT&O2Rのフルデジタルシステムへ移行して、すぐに作った曲のひとつだ。 (英語バージョンは完全2026新録で"The Dog Behind") ひとまずベースラインひとつのループから始めて、そこへどんどん音を重ねていき、後…

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ハゲはハゲである。

ある現実がある。 たとえば、あの人はハゲだとか、ある国が武器輸出を拡大したとか。 まず確認しておきたいのは、そういうものは最初から善でも悪でもない、ということだ。 それはただ、そこにある現実である。 武器輸出拡大は武器輸出拡大である。 そこにどういう意味を感じるかは、見る側の文化や背景や価値観によって変わる。 ハゲでも素敵だと思う人はいる…

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やはりDJは強い。

週末はCoachellaを時々眺めていた。 観ていて思ったのは、数年前まであった「ヒップホップでなければダサい」みたいな空気が、かなり薄れてきたことだ。 いまはバンドもヒップホップもエスニック系もDJも、わりとフラットに並んでいる。ジャンルの序列が崩れてきたのだと思う。 それ自体、とても健全な変化である。 何のジャンルかより、どうその場を…

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バグを活かす

バグを活かしていくということ。 それが、ロックの歴史だ。 エレキギターのアンプの歪み。オーバードライブ。 あれは、そもそもバグだった。 本来は絶対に歪まない範囲で使うはずのものを、 あえて歪んだまま作品にした。 そしてその「異常」が、 新しい快楽として音楽の核心に居直った。 ロックとは、 整った正しさをなぞることではない。 本来なら排除さ…

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イデオロギーの怖さ

少なくともミュージシャンがイデオロギーの中にいるとしたら、その音楽はもうアートでは無くなる。 イデオロギーの中にいることは、たしかに楽である。 そこには、すでに固められた石の土台がある。 その上に立っていれば、とりあえず足場は安定するし、自分は正しい場所にいるのだという、それなりの自己肯定感も得られる。 しかもその土台の上には、 わかりや…

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ミック・ジャガーがリファレンス

もう私は58歳になったらしい。 らしい、というのは、体感的にはいまいちピンと来ていないからだ。 心はいつも20代とか言うつもりはない。 1日前の自分でさえ若造と思える。 歳を重ねることは、むしろ楽しい。 ただ「世間一般の58歳」という平均値に、阿る気にはなれない。 そんなときに便利な物差しがある。 それが、ミック・ジャガーである。 彼は5…

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ブラックミュージックの良さがまったくわからなかった。

子供の頃、jazzとかブルーズとか、いわゆるブラックミュージックの良さがまったくわからなかった。 まず、メロディが覚えにくい。童謡や歌謡曲みたいに、「はい、ここがサビです。ここを一緒に歌ってください」という親切設計があまりない。輪郭が曖昧で、ふわっとしている。 コードもよくわからない。明るいのか暗いのか、はっきりしない。メジャーなのかマイ…

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恩人

トム・ウェイツ、エルヴィス・コステロ、トーキング・ヘッズ……。 麻田浩さんのことを書こうとすると、自然と背筋が伸びる。 それは、彼が日本の音楽シーンにおいて築いてきた功績の大きさに対する畏怖以上に、彼がつねに「本物の音楽」に対して誠実であり続けてきた人だからだ。 1970年代、麻田さんが率いるトムス・キャビンが日本に紹介してきたのは、単な…

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座右の銘

もし自分に座右の銘のようなものがあるとしたら、たぶん 「常識よりも本質を」 である。 これは大げさな人生訓みたいな顔をしているが、実際にはもっと地味な場面で、しょっちゅう自分に言い聞かせている。 たとえば、EQをどこでどう触るか、みたいな時である。 私はそこですら、わざわざ口に出すことがある。 常識よりも本質を。 なぜそんな確認が必要かと…

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AIのクセ

AIの進化が速い、という言い方では、もう少し足りない気がする。速いというより、こちらが覚えた手順に対して、まるで敬意がない。 時間をかけて企画を組み、試し、ようやく「このやり方で行けそうだ」と思った頃には、もう次のバージョンが出ている。 しかも新しいほうが、だいたい少し良い。 少し自然で、少し賢く、少し使いやすい。 その「少し」が実に厄介…

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猫たちのためだけに借りていた部屋

東京には、猫たちのためだけに借りていた部屋があった。 綾瀬スタジオの上のフロアである。 普通、部屋は人間が住むためのものだが、あの部屋に関しては少し違った。 あそこはホイちゃんとピータンとショーちゃんの部屋で、私は家賃を払いながら、スタッフとともに、たまに出入りする管理人のような存在だった。 そのピータンとショーちゃんはいなくなり、残され…

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それは、私の思うロックンローラーではない。

男が40を超えると、急に始めがちなテンプレ趣味一覧、みたいなものがある。 筋トレ、ジム、ランニング、山登り、キャンプ、豆を挽く、サウナ、スパイスカレー、蕎麦、ゴルフ……。 もちろん、他人が何をやろうが自由である。 ただ私は、あの「人生をちゃんと楽しんでる俺です」感の定型演出が、どうにも苦手だ。 スタジオDIYのときに薪ストーブを入れたとき…

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その前日

今日、綾瀬のセブンイレブンに行った。 そこは、ずっと閉まっていた店だった。 外は、真っ青な冬の空。 久しぶりにふらっと立ち寄ってみたら、店は新装開店していた。 店内は見違えるほどきれいになっていて、たくさんの商品が丁寧に並んでいた。 その中で、いつもひとりでバタバタしているパートのおばちゃんが、荷物を運んでいた。 「ああ、おばちゃん、あい…

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出したあとに、何も起きなかった

「スペシャル」を公開した。 特別な告知もせず、大きな言葉も添えず、いつもの場所に、ただ置いた。 それから一日が過ぎて、二日が過ぎて、世界は特に何も変わらなかった。 通知が増えるわけでもなく、空気がざわつくわけでもなく、朝は普通にやってきて、夜になったら、また静かになった。 昔だったら、この静けさに耐えられなかったと思う。 再生数を見て、反…

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才能って、生まれつき決まってるの?

才能って、生まれた瞬間に決まるものなんだろうか。それとも、気づかないうちに、少しずつ育っていくものなのか。この文章は、そのあいだを、静かに考えた記録です。 * 「才能ってあるの?」これ、人生でわりと何度も考える質問だと思う。 テストの点がいい人、絵がやたらとうまい人、楽器を触ったらすぐ弾けちゃう人を見ると、「いいなあ。あの人は才能があるん…

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音圧があるのに、潰れていない音の正体

「音圧を上げすぎると、逆に音が悪くなる」これはもう、都市伝説ではなく、完全に事実です。マスタリングを少しでもかじった人なら、誰もが一度はこの壁にぶつかります。 音圧を上げる。それはつまり、小さな音も引き上げ、すべての音を同じ高さに揃える、ということです。 するとどうなるか。ドラムも、ボーカルも、ギターも、全部がペタッと前に張り付いたような…

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ホームページは、いまでもロックだ。

──本当に? SNSがこれだけ強くなった今、そう聞き返したくなる人も、きっと多いと思う。 告知はSNSで足りる。存在証明も、アルゴリズムがしてくれる。 実際、カフェオレーベルスタジオに来る若いミュージシャンたちも、「Xだけです」とか、「インスタしかやってません」とか、そんなバンドが珍しくない。 それ自体が悪いわけじゃない。むしろ、時代とし…

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ミックスは、小さい音でやります。

ほとんど囁き声みたいな音量です。 メーターを見なければ、本当に鳴っているのか不安になるくらい。 ……と言うと、ちょっと大げさですね。 正確には、普通にテレビを見るくらいの音量です。 昔は違いました。 大音量で鳴らして、「うお、迫力ある!」とか言いながら作業していた時期も、確かにありました。 でも、それがいつ頃までだったかというと……もう2…

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エンジニア引退の決意

メジャーデビューしたときにもらった制作費で、 私は生ドラムが録れるプライベートスタジオを作りました。 車でもなく、服でもなく、 まず「音が鳴る場所」を選んだのは、 今思えば、ごく自然な選択だったと思います。 それ以来、 シュガーフィールズの録音をし、 インディレーベル「カフェオレーベル」を立ち上げ、 所属アーティストの作品を録り、 ときに…

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何もしないと決めた瞬間、曲が溢れた

もうエンジニアをやらない。そう決めた瞬間から、また私は、やたらとシュガーフィールズをやり始めている。 曲を書く。歌う。録る。 考える前に、手が動いている。 「何かを得るには、何かを捨てなきゃならない」——そういう言葉は、あまり好きじゃない。努力論っぽいし、根性論の匂いもする。 でも正直に言うと、この感じ、覚えがある。 大阪にいた頃の話だ。…

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バタフライエフェクト

世界は、だいたい静かに動いている。大事件はニュースになるが、ほとんどの変化は音を立てない。 たとえば、今日あなたがいつもより5分早く家を出たこと。駅の階段で、立ち止まるか、歩き続けるか迷った一瞬。コンビニで、いつものコーヒーではなく別の棚に手を伸ばしたこと。 その一つ一つは、取るに足らない選択に見える。だが、バタフライエフェクトはこう囁く…

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直感は、だいたい正しい

理屈よりも、理論よりも、合理性よりも。 最後に信じるべきものがあるとしたら、 たぶん直感だ。 ──などと言うと、 「感情的だ」とか 「再現性がない」とか 「ちゃんと考えたほうがいい」とか、 いろいろ言われそうだが、 正直に言ってしまえば、 私はもうその議論にあまり興味がない。 なぜなら、 人生の後半戦に入って気づいてしまったからだ。 直感…

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音と距離感について

音楽には、 だいたいの場合「ちょうどいい距離」がある。 近づきすぎると、 音は説明になり、 離れすぎると、 ただの風景になる。 そのあいだにある、 ごく短い距離。 そこに立てたときだけ、 音は自然に鳴る。 若い頃は、 音に近づきすぎていた。 どう鳴っているか。 どう評価されるか。 どう届くか。 マイクの位置も、 EQの数値も、 言葉の選び…

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夜中のスタジオでひとりになる

夜中のスタジオは、 昼とはまったく別の場所になる。 音は小さくなる。 判断も遅くなる。 世界との距離が、 少しだけ広がる。 それがいい。 誰もいないスタジオで、 私はあまり演奏しない。 音を出さずに、 椅子に座っている時間のほうが長い。 マイクは立っている。 スピーカーも電源が入っている。 DAWは起動したまま。 でも、 何も起きていない…

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