ホームページは、いまでもロックだ。
──本当に? SNSがこれだけ強くなった今、そう聞き返したくなる人も、きっと多いと思う。 告知はSNSで足りる。存在証明も、アルゴリズムがしてくれる。 実際、カフェオレーベルスタジオに来る若いミュージシャンたちも、「Xだけです」とか、「インスタしかやってません」とか、そんなバンドが珍しくない。 それ自体が悪いわけじゃない。むしろ、時代とし…

──本当に?
SNSがこれだけ強くなった今、そう聞き返したくなる人も、きっと多いと思う。
告知はSNSで足りる。存在証明も、アルゴリズムがしてくれる。
実際、カフェオレーベルスタジオに来る若いミュージシャンたちも、「Xだけです」とか、「インスタしかやってません」とか、そんなバンドが珍しくない。
それ自体が悪いわけじゃない。むしろ、時代としては、ごく自然だ。
でも──私にとって「ホームページを作る」という行為は、単なる告知ツール以上の意味を持っていた。
インターネット黎明期。まだ、SNSなんて影も形もなかった頃。
「ホームページを作る」というのは、これから来るネット社会に向けた、表現の第一歩だった。
それは同時に、「自分は、ここにいる」と、世界に向かって旗を立てる行為でもあった。
誰かのプラットフォームの中ではなく、誰かのアルゴリズムの上でもなく、自分の名前で、自分の場所を持つ。
今思えば、あれは、ずいぶんロマンチックで、そして、ずいぶん無防備な行為だった。
でも──ロマンチックで、無防備。それって、つまり、ロックだ。
そんな時代に、「インターネットはロックだ!」と、嬉々として語っていた人がいる。
鮎川誠 だ。
日本のミュージシャンの中でも最前線に立ち、自分でHTMLを書き、自分の手で、ホームページを作った。
「ホームページを作ることは、ギターを持つことと同じやね」
そう言い切ってしまう感覚が、もう、どうしようもなくロックだ。
挙げ句の果てに、「インターネット キッス」なんて曲までリリースしてしまうのだから、徹底している。
当時のインターネットは、便利というより、荒野だった。
だからこそ、そこに自分の小屋を建てること自体が、そのまま、表現だった。
正直に言えば、シュガーフィールズのホームページも、ここ何年も、ほとんど放置状態だった。
SNSで事足りていたし、忙しさにかまけて、「そのうちやろう」と、ずっと先送りにしてきた。
でも、このたび、思い切って、リニューアルした。
久しぶりに向き合ってみて、はっきり分かったことがある。
ホームページのデザインって、自分の家作りと、まったく同じなのだ。
家の雰囲気。玄関を開けたときの空気。どこに何があって、どう歩いて、どこで腰を下ろすか。
そして何より、「ここにいると、落ち着くな」と思えるかどうか。
バズらなくてもいい。回遊率がどうとか、CVがどうとか、もちろん大事だけど、それ以前に──
自分が、ここに住みたいか。
ホームページは、今や、最前線の拡声器ではない。
でも、「帰ってくる場所」「その人が、どういう世界観で生きているか」を、静かに伝える装置としては、むしろ、価値が上がっている気がする。
SNSは、路上ライブ。ホームページは、家だ。
どちらが偉いわけでもない。ただ、役割が違う。
私はやっぱり、自分の家を持っていたい。
玄関を開けたら、「ああ、ここだ」と、思える場所を。
ホームページを作ることは、もう、時代遅れかもしれない。
でも、自分の表現の拠点を、自分の手で建てる行為そのものは、今も、十分ロックだと思っている。
DAWを触ることも、ギターを持つことも、きっと、そんなに変わらない。
制作環境AMATERAS STUDIO / AMATERAS SHOPhttps://amaterasshop.base.shop/