夜中のスタジオでひとりになる
夜中のスタジオは、 昼とはまったく別の場所になる。 音は小さくなる。 判断も遅くなる。 世界との距離が、 少しだけ広がる。 それがいい。 誰もいないスタジオで、 私はあまり演奏しない。 音を出さずに、 椅子に座っている時間のほうが長い。 マイクは立っている。 スピーカーも電源が入っている。 DAWは起動したまま。 でも、 何も起きていない…

夜中のスタジオは、
昼とはまったく別の場所になる。
音は小さくなる。
判断も遅くなる。
世界との距離が、
少しだけ広がる。
それがいい。
誰もいないスタジオで、
私はあまり演奏しない。
音を出さずに、
椅子に座っている時間のほうが長い。
マイクは立っている。
スピーカーも電源が入っている。
DAWは起動したまま。
でも、
何も起きていない。
この「何も起きていない時間」が、
実は一番大事だったりする。
昼間は、
どうしても判断が早くなる。
正しいか。
使えるか。
意味があるか。
夜は違う。
音が鳴っていなくても、
「今はこれでいいな」と思える。
無理に前に進まなくていい。
決めなくていい。
説明しなくていい。
世界が静かになると、
音楽も黙る。
その沈黙が、
不思議と心地いい。
長いこと、
私はスタジオを
「何かを生み出す場所」だと思っていた。
曲を書く。
録る。
直す。
完成させる。
でも今は、
少し違う。
スタジオは、
何も生まれない時間を
許してくれる場所でもある。
成果のない時間。
進捗のない時間。
誰にも見せない時間。
それらがなければ、
次の一音は
出てこない。
夜中、
トラックボールに指を置いて、
結局、何も動かさずに
手を離すことがある。
それでいい。
その距離感を保ったまま、
今日は終わりにする。
ひとりでいる時間は、
孤独というより
調整だ。
音と。
自分と。
世界との。
少しズレたバランスを、
元に戻す作業。
夜中のスタジオは、
そのための
いちばん静かな場所だ。
制作環境AMATERAS STUDIO / AMATERAS SHOPhttps://amaterasshop.base.shop/