出したあとに、何も起きなかった
「スペシャル」を公開した。 特別な告知もせず、大きな言葉も添えず、いつもの場所に、ただ置いた。 それから一日が過ぎて、二日が過ぎて、世界は特に何も変わらなかった。 通知が増えるわけでもなく、空気がざわつくわけでもなく、朝は普通にやってきて、夜になったら、また静かになった。 昔だったら、この静けさに耐えられなかったと思う。 再生数を見て、反…

「スペシャル」を公開した。
特別な告知もせず、大きな言葉も添えず、いつもの場所に、ただ置いた。
それから一日が過ぎて、二日が過ぎて、世界は特に何も変わらなかった。
通知が増えるわけでもなく、空気がざわつくわけでもなく、朝は普通にやってきて、夜になったら、また静かになった。
昔だったら、この静けさに耐えられなかったと思う。
再生数を見て、反応を探して、「何か言わなきゃ」と、自分で空気を動かしていた。
でも今回は、そうしなくてよかった。
曲はもう、自分の手を離れている。
誰かが聴くかもしれないし、誰にも届かないかもしれない。
そのどちらでも、もう困らない。
この曲は、大勢の正面玄関に置くものではなく、ひとりの生活の中で、ふと鳴る場所に置いておきたかった。
たぶん、そういう音には、大きな説明が似合わない。
ただ、公開直後からものすごく眠った。
いくつかの夢を見た。
起きて、また次の曲を作り始めた。
音楽は、出した瞬間に完成するわけじゃない。
置かれて、時間が流れて、誰かの生活の中でふと鳴ったときに、やっと音楽になる。
何も起きなかった、ということは、たぶん悪くない。
静かに置けた、ということだから。
そしてもうひとつ。静かな場所に置かれた音は、同じ種類の静けさを持っている人にだけ、きちんと届く。
それが、いちばん自然な届き方だと思う。
次の音も、同じように置いていくつもりだ。
急がず、説明せず、ただ鳴る場所に。
制作環境AMATERAS STUDIO /AMATERAS SHOP[https://amaterasshop.base.shop/](https://amaterasshop.base.shop/)