ミック・ジャガーがリファレンス
もう私は58歳になったらしい。 らしい、というのは、体感的にはいまいちピンと来ていないからだ。 心はいつも20代とか言うつもりはない。 1日前の自分でさえ若造と思える。 歳を重ねることは、むしろ楽しい。 ただ「世間一般の58歳」という平均値に、阿る気にはなれない。 そんなときに便利な物差しがある。 それが、ミック・ジャガーである。 彼は5…
もう私は58歳になったらしい。
らしい、というのは、体感的にはいまいちピンと来ていないからだ。
心はいつも20代とか言うつもりはない。
1日前の自分でさえ若造と思える。
歳を重ねることは、むしろ楽しい。
ただ「世間一般の58歳」という平均値に、阿る気にはなれない。
そんなときに便利な物差しがある。
それが、ミック・ジャガーである。
彼は58歳のとき、ソロアルバム
『Goddess in the Doorway』
をリリースしている。
これがまた、どう考えても「初老の余生」とは無縁の、めちゃくちゃ瑞々しいロックアルバムなのだ。
前年の2000年には、
ザ・ローリング・ストーンズとして
『Bridges to Babylon』
の巨大ワールドツアーを終えたばかり。
普通の人なら、
「ふう……ちょっと一息つくか」
となるところである。
だが、ミックは違った。
バンドという巨大な集合体を一度横に置き、
「じゃあ次は、俺個人として何を歌う?」
と、ひとりの表現者に戻っている。
しかもそのテンションが、
若返ってるんじゃないか?
と思うほど軽やかで、好奇心に満ちている。
──ああ、なるほど。
私は思う。
年齢とは、老いの指標ではなく、
「どの参照軸を選んでいるか」の結果なのだと。
世間一般の58歳ならば、
不安も、衰えも、引き算も出てくるかもしれない。
でも、
私の人生のリファレンスは永遠にミック・ジャガー様
なのである。
・58歳で瑞々しいソロ作を出している
・世界ツアーを回っている
・しかも楽しそう
・まだ自分の内側を掘り続けている
──この基準で測ると、
今の私は、まあ悪くない。
想像するのだ。
2001年頃のミックが、
ホテルの一室か、スタジオの片隅で、
コーヒーでも飲みながら、ふとこう思っている姿を。
「まだやれるよな」
「いや、むしろ今がいちばん面白いかもな」
その静かな内省の気配に、
私は勝手に背中を預ける。
別に勝ち負けの話ではない。
だが、少なくとも──
負けてはいない。
そう思える58歳であること。
それ自体が、かなりロックだと思うのだ。